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将来判断力が衰えてしまった場合の安心のために任意後見契約を活用しましょう

任意後見契約

望ましくはないことですが、人は年をとるにつれ、物事を判断する能力や記憶力が衰えてくることは避けがたいものです。しかも、マスコミ報道によると日本社会は高齢化に伴って認知症の患者が急増しています。65歳以上の人のうち15パーセントもの人が認知症に罹患しているとのことです。認知症や脳障害の後遺症等が原因となって、自分の預金や年金の出し入れ、不動産に関する契約等の財産の管理、あるいは介護保険の申請、介護サービスの契約とか病院や介護施設への入院・入所契約などが十分にはできないということが起こります。少子高齢化や核家族化の進展によりそのようになってしまっても面倒を見てくれる人がいないということが多くなっています。そのような場合に備えて、判断力が十分あるうちに、自分が信頼できる人や団体(法人等)を任意後見人に選らんで任意後見契約を結んでおき、認知症等により判断力が衰えてしまったときにその任意後見人にいろいろ面倒を見てもらうのが任意後見制度です。
任意後見人は、代理人として財産の管理や病院の入退院に関する契約、介護施設への入所などの生活・療養看護や財産管理に関する事務をしてくれます。

任意後見契約は、法律で必ず公正証書でしなければならないと定められています。また、任意後見契約を結んだことは登記されます。

任意後見契約は、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した後にその効力が生じます。任意後見監督人は、その言葉のとおり、任意後見人がきちんとその責任を果たしているかどうかを監督するのが仕事です。

任意後見人等の選び方

任意後見人は、自分の判断で選ぶことができます。自分が信頼できる人や団体を選ぶことが大事です。例えば、親族、親しい友人や知人、弁護士、司法書士などの個人のほか、社会福祉協議会のような社会福祉法人とかNPO法人などの法人にも依頼できます。任意後見人になることができないのは、未成年者、破産者で復権していない人、本人に対して訴訟をしたことがある人、その配偶者などです。任意後見監督人は、家庭裁判所が選任します。

任意後見契約のメリット

法定後見は認知症等により判断力が衰えてしまったときに親族等の請求により家庭裁判所が後見人を選ぶ制度ですので、自分で後見人を選ぶことができません。任意後見制度はその法定後見とは異なり、自分の判断力が正常なうちに自分が信頼できると考える人や団体をいざというときに備えて予め後見人に選んでおくことができるところに大きなメリットがあります。

任意後見の内容

任意後見契約の内容をどのようにするかは、任意後見人になってもらう人にどのような範囲で代理権をあたえるのかということです。その内容範囲は、本人と任意後見人になってもらう人との話し合いで自由に決めることができます。

任意後見人、任意後見監督人の報酬について

任意後見人は無報酬のこともありますし、報酬が必要となる場合もあります。報酬が必要かどうかや必要な場合の具体的な金額は任意後見人になることを承諾してくれた人との話し合いによって決められます。一方、任意後見監督人には報酬を支払うことが必要ですが、その具体的な金額は家庭裁判所が定めます。これらの報酬は、本人の財産の中から支出されます。

移行型~「見守り契約等」と「任意後見契約」の組み合わせ

高齢者や病弱な方の中には、まだ判断力は低下していないが、足腰が弱ったり、病気のために銀行や区役所に行くことが困難だとか、財産管理も十分にできないという方もおられます。そのような方は、代理人を選んで自分の生活の支援や財産管理をしてもらいたいと希望していると思われます。また、将来判断力が低下してしまった場合のことも心配されているでしょう。そのような方のために「移行型」の任意後見契約があります。これは、任意後見契約と同時に通常の委任契約を本人と代理人になってくれる人との間で結ぶものです。その委任契約は、代理人に定期的に連絡をしてもらいながら、健康状態や生活状況などを確認して生活の支援をしてもらう「見守り契約」と別名で呼ばれる契約や財産管理をしてもらうものです。この委任契約をしておけば、任意後見を何時から開始すべきかも的確に判断して家庭裁判所に任意後見監督人の選任を請求してもらうことができます。つまり、その委任契約から任意後見契約への移行を円滑に行い、代理人による事務処理の中断を防ぐことができるのです。効果的な組み合わせであると思われます。この委任契約と任意後見契約は一通の公正証書ですることができます。

任意後見人と遺言執行者を同一人とすることについて

任意後見契約を結ぶのと同時に遺言公正証書を作成し、遺言を自分の意思のとおりに執行してくれる人(遺言執行者)にその任意後見人になってくれる人を指定することもよくあります。任意後見からさらに進んで遺言の執行を的確にするために合理的であると思われます。さらに、移行型の任意後見契約と委任契約を結ぶのと同時に遺言公正証書を作成することもよく行われています。

即効型と将来型について

任意後見契約には、前記の移行型のほかに将来型と即効型があります。将来型は、前記の移行型のうち委任契約はせずに、将来判断力が衰えた場合に備えて判断力が十分にあるうちに信頼できると考える人や団体と任意後見契約をしておき、将来認知症等によって判断力が低下してしまったときに任意後見契約の効力を生じさせて任意後見人に面倒を見てもらうものです。即効型は、既に軽い認知症に罹ってしまって判断力は衰えているものの、まだ契約を結ぶ能力は残っているというときに、すぐ面倒を見てもらうために任意後見契約を結び、ただちにご本人または受任者から家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立をして任意後見契約の効力を生じさせるものです。

作成までの手順

1 事前相談

事前相談

作成される内容を公証人にご相談ください。ご本人に役場までお出でいただくのが望ましいのですが、事情によっては、電話やファックスでお知らせいただくこともできます。このときに必要な書類が揃っているのが望ましいのですが、必ずしも全部揃っている必要はありません。また、公証人から任意後見契約のサンプルをお見せして説明することもできます。

2 文案の作成

公証人がご本人(委任者)と受任者(任意後見人になろうとする人)のお考えと契約内容を確認して任意後見契約公正証書の文案(原稿)を作成し、その文案をご本人と受任者に見ていただきます。文案をお渡しする方法は、役場までお越しいただく、郵送する、フアックス送信するなどの方法があります。

3 作成日時の調整等

文案の内容が間違いなければ、任意後見契約公正証書を完成させる日時を調整させていただきます。文案の内容に違う点があれば、公証人がその違う点を確認させていただき、文案を修正してもう一度ご本人と受任者に見ていただきます。

4 任意後見契約公正証書の作成(完成)と登記

作成日にご本人と受任者に内容の最終確認をしていただいた上、署名押印(原則として実印が必要です。)していただいて完成させます。その後、役場から、東京法務局に任意後見契約の登記申請をし、登記完了後その旨ご連絡します。

5 作成に要する期間

契約の内容や必要書類の揃い方などにより異なりますが、事前相談から完成まで、早ければ3日くらい、通常は1週間くらいです。

必要な書類等

  1. ご本人の印鑑登録証明書(発行後3か月以内のもの。以下同じ。)、実印、住民票、戸籍謄本
  2. 受任者が個人の場合は、印鑑登録証明書、住民票、実印、受任者が法人で、代表者が契約の場に来られる場合は、法人の登記簿謄本、法人の印鑑証明書、法人の実印、代表者自身の身分証明資料(写真付きの公的証明書~自動車運転免許証、パスポート等)代表者の代理人が契約の場に来られる場合は、法人の登記簿謄本、法人の印鑑証明書、法人の代表者から代理人に対する委任状(法人の実印を押し、委任内容を具体的に記載したもの)、代理人自身の身分証明資料(写真付きの公的証明書~自動車運転免許証、パスポート等)、代理人の印鑑(認印で可)

必要な手数料(法務省が定めだ手数料令で決められています。)

1 基本手数料

11,000円です。
移行型の場合は、その任意後見契約の手数料のほかに委任契約に関する手数料も必要になります。

2 正本や謄本の費用

1枚につき250円かかります。通常、ご本人と受任者にお渡しする正本2通と、東京法務局への登記申請に使用する謄本1通が必要で、その費用がかかることになります。

3 登記用印紙代等

印紙代2,600円と登記嘱託書留郵送料(実費)及び登記嘱託手数料1,400円が必要になります。

4 出張の場合の費用

ご本人の体力が弱ったり、入院しているなどの事情により役場にお出でいただくことが困難な場合は、公証人がご自宅や病院等に出張しますが、この場合は、基本手数料のほか日当や交通費がかかります。

任意後見についてのよくあるご質問・疑問と回答

任意後見人にはどのようなことをお願いできるのですか。
ご本人と受任者との合意によりますが、通常、不動産や預貯金等の財産管理、金融機関との取引、保険会社との取引、老人ホームや福祉関係施設への入退所、要介護認定申請、介護契約、福祉サービスの利用契約、病院の入退院の手続き、税金や公共料金等諸費用の支払いなどに関することをお願いできます。
どのような人が任意後見人になれますか。
法律で、破産者、ご本人に対して訴訟を起こしたことがある人、著しい不行跡のある人その他任意後見人の任務に適しない事由のある人は任意後見人になることはできないとされています。それ以外の成人であれば誰でも任意後見人になることができます。ご本人が信頼できると思われる人を選ぶことが大事です。例えば、配偶者、子、兄弟姉妹、甥や姪とか友人、知人、弁護士、司法書士、行政書士、社会福祉法人、NPO法人、リーガルサホートセンターなどに任意後見人になってもらうことができます。
任意後見監督人にはどういう人がなるのですか。
多くの場合、弁護士や司法書士など法律知識を有している人が家庭裁判所によって選任されます。
任意後見人を2人にすることはできますか。
任意後見人は2人以上でも可能です。ただし、2人以上を任意後見人とする場合には、各自が独立してその権限を行使できるのか共同して権限を行使できるのかを定めておく必要があります。また、任意後見人同士の意見が食い違ったりした場合に困らないように、それぞれの権限の範囲を明確に分けておくことが良いように思われます。
予備的に任意後見人をお願いできますか。
予備的に任意後見人をお願いすることも可能です。例えば、任意後見人にお願いした人がご本人より先に死亡されたりしまった場合に備えて別な人をその次の任意後見人にお願いしておくという方法です。しかし、予備的な登記の方法が認められていませんので、登記上は2人として、内部的に予備的なものとせざるをえないと思われます。詳しいことは公証人にお尋ねください。
認知症の初期との診断を受けてしまいましたが、任意後見契約を結ぶことができますか。
認知症と診断されていてもそれが軽度で判断能力があれば任意後見契約を結ぶことはできます。認知症が進行してしまい、判断能力が不十分になってしまった場合は法定後見制度を利用することになります。
判断力は正常にあると思うのですが、病弱で足腰が不自由で外出が困難なため、預貯金の払い戻しなどの財産管理が十分にできない状態です。任意後見人をお願いできますか。
任意後見契約は、ご本人の判断力が衰えてしまった場合に家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときから効力が始まるものですから、お尋ねのように判断力が正常なうちは任意後見人をお願いすることはできません。その場合は、本文で説明したように移行型、つまり委任契約と任意後見契約の組み合わせの契約を結んで受任者に財産管理等をしてもらうのが良いと思われます。
任意後見人に預貯金等を使い込まれてしまう心配はありませんか。
先ず、そのようなことのないようにご本人が本当に信頼できる人や団体を任意後見人に選ぶことが大事です。そして、家庭裁判所が選んだ任意後見監督人がそのようなことのないよう任意後見人を監督します。その監督のために、任意後見人は定期的に任意後見監督人に、行っている後見事務の内容を報告しなければなりませんし、家庭裁判所は、その任意後見監督人からの報告により任意後見人の仕事を間接的にチェックする仕組みになっています。さらに、家庭裁判所は、任意後見人に任務に適さない事由があると認められたときには、任意後見監督人等の請求によって任意後見人を解任することができます。このように制度上の安全策を講じています。
私が死亡した後に障害を持つ子の面倒を見てもらうことは任意後見契約でできませんか。
遺言の質問の部分でも説明しましたが、そのお子さんに契約を結ぶ判断能力があれば、お子さん自身が委任契約と任意後見契約を結び受任者に色々な面倒を見てもらうことができます。また、お子さんが未成年者の場合には、親が親権に基づいてお子さんの代理人として任意後見契約を結んでおくという方法もあります。

※その他の任意後見に関する疑問等は何でも結構ですから公証人に直接お尋ねください。また、任意後見についての質問と回答の詳細については、日本公証人連合会のホームページに掲載しています。この八重洲公証役場のホームページの「リンク」を開けるとご覧いただくことができます。

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