金銭消費貸借契約及び
債務弁済契約
金銭消費貸借契約の公正証書について
金銭消費貸借契約は、金銭の貸し借りの契約です。金銭の貸し借りについて、その金額と返済期限を確定した内容(「一定性」といいます。)の公正証書を強制執行認諾文言付きで作成すれば、万一、その約定どおりの返済がなされない場合、裁判をすることなく借受人や保証人の財産を差し押さえたりする強制執行ができます。また、約定どおりに返済しなければ裁判を経ずに強制執行を受けることがあることを考慮して、借受人や保証人が約定どおりに返済することが期待できます。さらに、その公正証書の原本は公証役場で保管しますので、正本や謄本を万一紛失したり焼失してしまっても安全ですし、裁判になっても法律の専門家である公証人が法律上の効力に問題がないよう検討して作成する公正証書が 極めて有力な証拠になります。
このように、金銭消費貸借契約を公正証書にすることには多くの意義があります。
債務弁済契約の公正証書について
債務弁済契約とは、債務者が債権者に対して、色々な原因に基づく債務(例えば、請負契約や売買契約等各種契約の不履行による損害賠償債務、横領等の不法行為による損害賠償債務であり、金銭消費貸借契約に基づく債務も含まれる。)の存在を確認し、その債務の履行を約束する契約です。
その債務が金銭債務であって、その金額と支払期限を確定した内容(「一定性」といいます。)の公正証書を作成すれば、万一、その約定どおりの支払がなされない場合、裁判をすることなく債務者や保証人の財産を差し押さえたりする強制執行ができます。また、約定どおりに支払しなければ裁判を経ずに強制執行を受けることがあることを考慮して、債務者や保証人が約定どおりに支払うことが期待できます。さらに、債務弁済契約の公正証書の原本も公証役場で保管しますので、正本や謄本を万一紛失したり焼失してしまっても安全ですし、裁判になっても法律の専門家である公証人が法律上の効力に問題がないよう検討して作成する公正証書が極めて有力な証拠になります。このように、債務弁済契約を公正証書にすることにも多くの意義があります。
公正証書作成までの手順
金銭消費貸借契約と債務弁済契約の公正証書作成の手順はほぼ同様ですので、以下にまとめて説明します。
1 事前相談
作成される内容を公証人にご相談ください。既に債権者(貸付人)と債務者(借受人)との間で契約書や合意書を作成していることが多いと思われますが、その契約書や合意書があれば、それをお持ちいただくか、郵送又はファクスあるいはメールでお送りください。合意する内容を記載したメモでもかまいません。このときに必要な書類が揃っているのが望ましいのですが、必ずしも全部揃っている必要はありません。また、公証人から金銭消費貸借契約や債務弁済契約の公正証書のサンプルをお見せして説明することもできます。
2 文案の作成
公証人が債権者(貸付人)と債務者(借受人)のお考えと契約内容を確認して公証書の文案(原稿)を作成し、その文案を当事者に見ていただきます。文案をお渡しする方法は、役場までお越しいただく、郵送又はファクスあるいはメールでお送りするなどの方法があります。
3 作成日時の調整等
文案の内容が間違いなければ、公正証書を完成させる日時を調整させていただきます。文案の内容に違う点があれば、公証人がその違う点を確認させていただき、文案を修正してもう一度当事者に見ていただきます。
4 金銭消費貸借契約又は債務弁済契約の公正証書の作成(完成)
作成日に当事者に内容の最終確認をしていただいた上、署名押印(原則として実印が必要です。)していただいて完成させます。なお、事情によってはご本人ではなく、代理人に役場までお出でいただいて作成することもできます。なお、執行のために必要となる謄本の送達については、ご本人が役場にお出でいただく場合は謄本を役場で直接お渡しして交付送達することができるのですが、代理人の場合は後に郵便送達することになります。
5 作成に要する期間
契約の内容や必要書類の揃い方などにより異なりますが、事前相談から完成まで、早ければ2日くらい、通常は1週間くらいです。
必要な書類
1 当事者本人が役場に来られる場合
- 当事者が個人の場合
発行後3か月以内の印鑑登録証明書と実印又は自動車運転免許証等と認印(シャチハタ不可) - 当事者が法人で法人の代表者が役場へ来られる場合
発行後3か月以内の法人の商業登記簿謄本、発行後3か月以内の法人の代表印の印鑑証明書及び代表者印代表者の身分証明資料(自動車運転免許証、パスポート等の写真付きの公的証明書)
2 代理人が役場に来られる場合
- 当事者が個人の場合
本人から代理人に対する委任状(本人の実印を押し、委任内容を具体的に記載したもの)
発行後3か月以内の本人の印鑑登録証明書
代理人の身分証明資料(自動車運転免許証、パスポート(パスポートの場合住民票が必要)等の写真付きの公的証明書)と代理人の認印又は代理人の印鑑登録証明書と実印 - 当事者が法人の場合
発行後3か月以内の法人の商業登記簿謄本、発行後3か月以内の法人の代表印の印鑑証明書、法人の代表者から代理人に対する委任状(法人の代表者印を押し、委任内容を具体的に記載したもの)、代理人の身分証明資料(自動車運転免許証、パスポート等の写真付きの公的証明書)
必要な手数料
金銭消費貸借契約又は債務弁済契約の公正証書作成の手数料は、当該契約の貸付額又は弁済額を目的額として、下記の表により算定します。なお、正本・謄本は、それぞれ250円×枚数の費用がかかり、役場で保存する原本は4枚までは無料、4枚を超えるときは超過枚数×250円の費用がかかります。さらに、金銭消費貸借契約については目的価額に応じて、印紙税法に定められた印紙代がかかります。債務弁済契約についての印紙代は200円です。
目的の価額 | 手数料 |
---|---|
100万円以下 | 5000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 17000円 |
1000万円を超え3000万円以下 | 23000円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 29000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 43000円 |
1億円を超えるものは、5000万円までごとに、3億円までは13000円、10億円までは11000円、10億円を超える場合は8000円を、それぞれ43000円に加算する。 |
金銭消費貸借契約又は債務弁済契約公正証書についてよくあるご質問・疑問と回答
- 金銭消費貸借契約には実際に金銭の授受が必要だと聞きましたが、例えば、その金銭の授受を半年後にするという内容の金銭消費貸借の公正証書を作成できますか。
- 金銭消費貸借契約は、要物契約といい、金銭の授受(手形や小切手の交付、預金通帳と印鑑の交付等金銭の授受があったのと同一の経済上の利益がある場合も含まれます。)が実際に行われることが必要です。お尋ねの場合は、契約を結ぶ時点では金銭の授受が行われない、諾成的消費貸借契約といわれるもので、通常の金銭消費貸借契約とは異なります。いわば、予約契約ですから、金銭消費貸借契約とは効力が異なり、強制執行認諾文言を付した公正証書を作成しても強制執行はできないことになります。実際に金銭の授受がなされる際に改めて強制執行認諾文言付きの公正証書を作成する必要があるというのが、執行実務の取り扱いです。ただ、当事者が合意の上で、予約としての意味を持つ公正証書を作成することは可能です。そのような公正証書を作成する必要がある場合には、公証人にご相談ください。
- 既に弁済期が到来してしまっている金銭債務について、強制執行認諾文言付きの債務弁済契約の公正証書を作成できますか。
- できますが、弁済期をどのようにするかの問題があります。既に到来してしまっている弁済期をそのままにして債務弁済契約の公正証書を作成すると、履行不能な公正証書を作成してしまうことになりますので、新たな弁済期を設定することが必要です。また、「債務者は、前条記載の債務を直ちに支払うことを約した。」とする債務弁済契約公正証書を作成することも考えられます。